2022年11月15日(火)に1日を通して行われた、新潟市職員の皆様を対象とした「DXに関する1Day研修」について、背景や事前準備の内容、当日の研修の様子、クライアントのご感想などをご紹介します。背景と取り組み変化が激しく社会情勢の予測が困難なVUCA(ブーカ)の時代と呼ばれる現代。その変化に柔軟に対応するためには、デジタル技術とデータを活用し、ビジネスや組織の基盤を再構築する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」への取り組みが不可欠と言われています。また、新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、消費者の動きもよりリアル・対面から非対面・非接触へとシフト。DXへの取り組みは、日本全体で早急に取り組むべき喫緊の課題です。そんな中、新潟市は、自治体がデジタル技術を活用し、住民の利便性や行政サービス向上を目指す「自治体DX」に取り組んでいます。しかし、自治体のみで推進していくことに課題感を感じ、民間企業と連携しながら自治体DXを進めていきたいとのご意向をお持ちでした。「Update Local」をミッションに掲げるDERTAは、地方企業や地域に根ざした課題を「デザイン」「デジタル」「共創コミュニティ」の力で解決する会社です。今回DERTAは、DXに明るい多様なメンバーの知見を活用し、新潟市職員の皆様を対象とした「DXに関する1Day研修」を行いました。新潟市職員の皆様に対してDXの知識をインストールし「自治体DX」推進における意識改革を目指した研修内容を紹介します。事前準備はオンラインで今回講師としてお招きしたのは、「いちばんやさしいDXの教本」の著者で、PM/UXデザイナーとして活躍するディップ株式会社/株式会社グッドパッチの亀田 重幸さん。ワークショップ・タイムラインの設計は、亀田さんと共にDERTAの須貝が中心となって行いました。須貝は、新潟と東京でのプロジェクトマネジメントやUXデザインの経験を持つため、講師とクライアント両者の現場感覚を持ち合わせています。お互いの意向がより良い形で反映されるご提案ができるよう努めました。また、今回のワークショップ内では、複数人で閲覧・編集ができるオンラインホワイトボードツール「Miro(ミロ)」を使用することになりました。Miroは無地の画面にテキストや図形などを書き込めるようになっており、図やグラフを用いての情報整理、付箋でのアイデア出しなど視覚的な情報共有を簡単に行うことが可能です。議論の過程もそのまま残すことができるため、アイデアの発散・収束などを行うワークショップなどを行う場合、非常に適したツールとなっています。しかし、Miroは地方自治体では使い慣れないツール。少しでも仕様に慣れて当日の進行もスムーズに行えるよう、また研修への意欲も高められるよう、参加者の皆様には「今回のDX講座で学びたいこと」等をMiroに事前に記載していただくという課題を出しました。DXに関する1Day研修を開催2022年11月15日。新潟市職員の方々、約40名を対象に、DXに関する1Day研修を開催しました。参加者は庁内の公募によって集められ、部署・年齢関係なくDXに興味関心のある方々が参加されました。午前中は参加者の皆様同士での自己紹介やメイン講師からの講義、お昼休憩を挟んで午後は、実践的なワークショップ・発表を行いました。午前中は講義を中心に設計午後のワークショップは1グループ6~7名の、計7グループに分かれて実施。午前中からグループごとに席に着席し、そのメンバー内で自己紹介を行いました。ちなみに、各グループ名は、新潟らしく「八海山」「麒麟山」など日本酒の名前に設定。和やかな雰囲気の中、講義がスタートします。次に、新潟市 総務部 デジタル行政推進課の箕打正人様から、来年発表される「新潟市デジタル化基本方針」の素案について、約20分間のご説明が行われました。続いて、午前中のメインである、ディップ株式会社/株式会社グッドパッチ 亀田重幸氏から約50分間の講義が行われました。講義のテーマは「自治体DX概論」DXについて、デジタル化との違いや国・地方自治体・新潟市が掲げているDX構想や、自治体DXを支援する民間サービス、現在の課題などを身近な例などを挙げながら紹介いただきました。最後に、自治体DXを考える際に役立つ「UXデザイン」という手法について解説。講義全体を通して、自治体DXを取り巻く現状や必要なネクストアクションについて、網羅的に理解を深めていただく時間となりました。午後は実践的なグループワーク、具体的なネクストアクションの設定午後は、これから職員の皆様が自治体DXを実践する際、住民に寄り添ったサービスを生み出すことを目指して実践的なグループワークを実施。午前の講義の最後に触れた「UXデザイン」という手法を使って課題の見つけ方や企画の作り方を体験いただくワークショップを行いました。まずは、チームごとにDXによって改善できると思われる自治体の業務を考え、テーマを設定します。その後、テーマに沿ったカスタマージャーニーマップ※を作成しました。各チームごとに講師・DERTAメンバーがチームリーダーとして入り、ワークショップのサポートを行いました。※カスタマージャーニーマップ:ユーザーが目的を達成するにあたってたどる流れを旅(ジャーニー)のプロセスに見立てて可視化するもの。テーマに関する必要な行動やプロセスをマップに可視化し、それに対する市民の感情や職員側の感情を書き出していくことで、具体的な課題や解決案を導き出していきます。続いて、導き出された中で一番良かった解決案を企画書に落とし込み、エレベーターピッチ用のテキスト、プレスリリースの骨組み、システムフロー図の作成を行いました。その後、企画実現のために、チームで企画承認までのロードマップを作成。また提案に必要な準備、妨げになりそうな課題、具体的なアクションプランも書き出しました。ここで、テーマ設定から課題抽出、企画書作成・提案までの一通りの流れを体験するワークショップは終了。最後に、全体に向けてチームの代表が企画内容を発表し、1日を通してのプログラムが全て完了いたしました。参加者の声DXについて、業務への活かし方がわからなかったが、講演やワークショップを通して、具体的にイメージができるようになった。庁内のいろんな場面で、DXによって効率化やサービスの向上を図れることを学んだ。DXは「アナログからデジタルに置換される=作業効率化」くらいの認識だったが、チームリーダーのサポートのもと、普段触れることがなかったデジタルツールを用いたプレゼン作成ワークを通じて、ワークシェアリングやコミュニケーションの円滑化を実感。行政のトランスフォーメーションの可能性を感じた。Miroを活用したワークショップを普段関わりのない部署の人たちとはじめて実施して、非常に学びが多かった。DXを推進するために職員もデジタルツールに実際に触れてみることの重要さも感じた。お客様の声Miroの使用やカスタマージャーニーマップの作成など自治体では馴染みのない内容だっただけにうまくワークショップが進行できるか不安もありましたが、DERTAのメンバーが各班に入ってくださったおかげで活発なやりとりが行われたと思います。研修後のアンケートでも回答した全員が内容が適切だったと答えてくれました。事前課題では単にオンライン化したいというような漠然としたイメージしか持っていなかった参加者がワークを通して市民の感情を考える中で、「高齢の方はWEB入力はできなくても電話の自動応答なら利用できるかも」というような新しい発想が出てきたりしたのがよかったと思います。今回の1日研修で終わることなく、「UXデザイン」の考え方を庁内に浸透できるようにしていきたいですね。Credit企画、ディレクション:須貝美智子イベント運営:坂井俊、丸山太一、永井大地、明間隆