新潟市は、新潟駅、万代、古町をつなぐ約2kmの都心軸、通称「にいがた2km(キロ)」を舞台に、デジタルツインや各種データを活用したまちづくりDXを推進しています。その一環として、2026年1月に「まちづくりDXに向けたデータプラットフォーム構築検討ワーキング」が全3回にわたり開催されました。DERTAは、株式会社福山コンサルタント、株式会社Eukarya、一般社団法人コード・フォー・ジャパンと共に、プログラムの企画設計・運営・ワークショップ設計およびファシリテーションを担当。業界を超えた15社が集い、有識者講演やグループワークを通じて、WebGIS「Re:Earth」を活用したデジタルツインの可能性を探り、全5件のユースケースを創出しました。プロジェクトの背景人口減少・少子高齢化が進み、都市が抱える課題が複雑化・多様化する現代において、従来のまちづくりの仕組みそのものをリデザインすることが急務となっています。新潟市は令和2年度より国土交通省の「Project PLATEAU」に参加し、「にいがた2km」エリアを対象に3D都市モデルの整備を推進。さらに、産業面に特化したXR活用「NIIGATA XRプロジェクト」を構築し、ユースケース創出に取り組んできました。こうした実績を次のフェーズへと発展させるにあたり、新潟市が重視したのが「官民連携・異業種連携」という視点です。デジタルを活用した持続可能なまちのエコシステムを実現するためには、技術の「作り手(開発者)」だけでなく、それをビジネスや地域課題の解決に活用する「使い手(ユーザー)」の視点を設計の段階から組み込むことが不可欠です。多様な民間企業と共に構想を育む場として、令和7年度より本ワーキングが立ち上げられました。取り組みについてプログラム概要まちづくりDXに向けたデータプラットフォーム構築検討ワーキング開催日:2026年1月15日(木)、1月20日(火)、1月26日(月)場所:NINNO3/Room F(新潟市中央区天神1丁目1番3号)参加企業数:15社内容:【DAY1】デジタルツインの基礎理解と操作体験【DAY2】課題の可視化とソリューション・アイデアの創出【DAY3】サービス整理とユースケースの可視化全体の設計についてデジタルツインやDXの取り組みは、技術的な検証や整備に重点が置かれるあまり、実際にそれを活用する「使い手」の視点が後回しになりがちです。本ワーキングではその課題意識を設計の出発点に据え、「ユーザー視点」と「共創」を軸に、4つのアプローチを統合しました。設計コンセプト:理論と実践の統合データ駆動型ストーリーテリングサービスデザイン手法によるアイデアの体系化デジタル・コラボレーション環境の構築1. 設計コンセプト:理論と実践の統合利用者の潜在的ニーズを洞察する「サービスデザイン思考」と、不確実な状況下での意思決定理論「エフェクチュエーション」を組み合わせ、地域課題への「ユーザー視点での解決策」と、参加企業の持つ「強み・リソースを活かした実現可能なアクション」の両立を図った。2.データ駆動型ストーリーテリング新潟市が保有する統計データと、参加企業が持つ現場知見を「Re:Earth」上で可視化・共有。参加者自らが地図上でデータを読み解き、課題発見から解決策を主体的に導き出すプロセスを重視。3.サービスデザイン手法によるアイデアの体系化「共創」を核に、多様な参加者の知見を掛け合わせながら人間中心の設計を徹底。第2回では「価値仮説シート」、第3回では「リーンキャンバス」へと落とし込み、アイデアを体系化。最終的に、利用者体験(UX)を重視した社会実装可能なユースケースの構築へとつなげた。4.デジタル・コラボレーション環境の構築対話と思考の可視化を最大化するため、オンラインホワイトボード「Miro」を全面活用。同時多発的なアイデア発散と議論の可視化を促進し、検討の全プロセスをデジタルデータとして蓄積。検討の経緯を損なうことなく、最終的なアウトプットの論理的整合性を担保する環境を整備。プログラムの様子【DAY1】デジタルツインの基礎理解と操作体験第1回(DAY1)は、WebGIS「Re:Earth」の基礎理解と操作体験を中心とした導入回として実施しました。冒頭では新潟市より本プロジェクトの趣旨とビジョンが共有された後、「Re:Earth」を提供する株式会社Eukarya 代表取締役CEOの田村賢哉氏が登壇。デジタルツインを誰もが活用できる「デジタル公共財」として位置づけ、他県での社会実装事例を交えながらその可能性を具体的に示しました。技術導入を目的とするのではなく、地域課題の解決や価値創出の手段として捉える視点が参加者の間で共有されました。その後は、「Re:Earth」の操作演習と「Miro」を用いた課題整理ワークを実施。参加者同士の対話が自然と生まれ、次回以降の議論に向けた共通基盤と関係性の土台が育まれました。【DAY2】課題の可視化とソリューション・アイデアの創出第2回(DAY2)は5チームに分かれ、各社の技術・リソースと地域課題を掛け合わせ、具体的なソリューションアイデアを創出するワークを実施。IT・システム、インフラ、交通、保険、小売、建設、行政と、多様な業種が一堂に会する中、「にいがた2km」エリアの2Dマップ(白地図)を用いた「課題マッピング」では、業種ごとの着眼点の違いが化学反応を生み、単独では生まれ得なかったアイデアが各チームで次々と生まれていきました。また、人流データや施設情報を「Re:Earth」上で重ね合わせることで議論に客観的な根拠が加わり、実装を見据えたアイデアは「価値仮説シート」にて整理・言語化しました。有識者講演では、一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事の関治之氏が登壇。全国的にも検証段階にあるデジタルツイン活用において、新潟市から実効性の高いユースケースが生まれることへの期待が示され、参加者がワークショップの先にある社会実装を具体的に見据える契機となりました。第2回終了後には、懇親会を開催。リラックスした雰囲気の中、ワーク中には掘り下げきれなかった技術活用や事業化の可能性をめぐる対話が自然と広がり、官民・異業種間の相互理解と共創関係がさらに深まる時間となりました。【DAY3】サービス整理とユースケースの可視化第3回(DAY3)は、これまでの検討成果をもとに価値仮説を収束させ、サービスの具体化と最終発表を行う集大成の回です。各チームは第2回で作成した「価値仮説シート」をもとに議論を深め、提案するサービスを1つに絞り込んだ上で「リーンキャンバス」を作成し、ビジネスモデルの設計へと進みました。さらに「ストーリーボード(6コママンガ形式)」を用いてユーザーの利用シーンや行動・感情の変化を物語として可視化することで、より具体的なサービスイメージへと結実していきました。最終発表では全5チームが成果を発表。回遊促進・市民参加型まちづくり・観光案内・観光体験・出店支援と、テーマは多岐にわたりましたが、いずれも「Re:Earth」を活用して空間情報を可視化し、物理的制約やコストのハードルを下げながら検証の間口を広げるという方向性は共通していました。別チームからの問いかけが新たな気づきを生む場面も多く見られ、会場には3日間の議論を経て生まれた達成感と手応えが溢れていました。新潟市による総括では今後の社会実装への意向が示され、本ワーキングは構想から実装へと歩みを進めるための確かな起点となりました。まちづくりに「正解」はありません。だからこそ、多様な知見と視点が交わる場に意味があります。DERTAは引き続き、行政と民間企業の共創を支える伴走者となり、「デザイン」「デジタル」「共創コミュニティ」の力で、地域課題の解決と持続可能なまちづくりの実現に貢献していきます。参加者の声普段は聞くことができない、あらゆる方々の意見を聞けたり、思い等を聞けて率直に良い時間だったと感じます。皆様から出していただいたたくさんのアイデアを持ち帰り、今後の社内運営にも役立てればと思います。新潟市のまちづくり課題と自社技術を掛け合わせて提供できるサービスを考えることが、普段は持たない切り口で考える貴重な体験になりました。それぞれの立場の知見を出し合って、よりよいものを創出していこうという高みを目指す意見交換ができたことが貴重な経験でした。新潟市や他社との共創ビジネスを進めていきたい。積極的に参加できればと思います。お客様の声デジタルツインのまちづくりを推進するためには、技術を有する企業と行政だけでは、課題の掘り下げや、本当の意味で利用価値のあるサービスを立案することは難しいと考えています。まちの当事者である民間事業者のみなさんと、行政、そして解決手法やデータを保持する企業とが、共に考える場をデザインしていただきました。一般的なワークショップではなく、デジタルツールを活用することで、短時間で効率的に多くの参加者の意見を見える化し、AIも駆使してアウトプットの質を高めるなど、非常に有意義な共創の場として機能していました。この場で生まれたアイディアや関係性を元に、引き続きデジタルツインのまちづくりを推進していきたいと思います。この度はありがとうございました。Credit企画、ディレクション、運営:坂井 俊、須貝 美智子、岩佐 克之