デザイン経営をテーマにしたカンファレンス「Design Dimension Conference」。DERTAは一般社団法人Design Dimensionとタッグを組み、2024年5月18日に新潟で初開催となった「Design Dimension 2024 NIIIGATA」の企画・運営をサポートいたしました。プロジェクトの背景や当日の様子をご紹介します。プロジェクトの背景一般社団法人Design Dimensionが運営する「Design Dimension」は、デザイン経営を通じて地域の発展を支援するプラットフォームです。その一環として開催される「Design Dimension Conference」は、経営層やデザイナーが集い、共育・共創コンテンツを通じて、日本の未来を担う人材、組織、地域を生み出すことを目指しています。過去には京都、北海道で行われました。DERTAは、「ひと」「仲間」「地域」をもとにした「共創コミュニティ」を核に社会のデザインを行い、様々な挑戦が生まれる土壌づくりを目指しています。「Design Dimension」と同じく、「デザイン」「共創」が地域を変革してゆく未来を信じており、このカンファレンスを新潟に誘致することが地域を拓く一歩につながると確信し、共催に至りました。「Design Dimension Conference」は、開催地の歴史、産業、文化に基づいた独自のセッションが特徴です。新潟開催において、「Design Dimension」代表の中野敢太氏がセッションの土台を組み立てるプロセスにDERTAメンバーも参加。新潟の価値の再定義や、焦点を当てるべきテーマについて協議いたしました。また、DERTAは新潟でのデザイン経営や広義のデザインに関するイベント実績を生かし、ゲストスピーカーの選定、集客、会場設営、当日運営等をサポートいたしました。概要Design Dimension 2024 NIIIGATA「変化と強さが未来をつくる」 日時:2024年5月18日(土)12:00〜20:30場所:MOYORe:内容:12:00 基調講演「地域企業のデザイン経営化」 永井一史氏|HAKUHODO DESIGN 代表取締役社長/多摩美術大学教授 齋藤恵太氏(モデレーター)|新潟県参与 デザイン経営担当 / 株式会社グッドパッチ13:00 Session1「産業の変化と成長の可能性」 澤正史氏|三ツ目株式会社 代表取締役兼CMO 齋藤優介氏|株式会社つばめいと/株式会社Ibiza CMO 武田修美氏(モデレーター)|株式会社MGNET 代表取締役14:00 Session2「デザインによる地域性の価値化」 石川竜太氏|株式会社フレーム 代表取締役 グラフィックデザイナー アートディレクター 堅田佳一氏|KATATA YOSHIHITO DESIGN 代表/中川政七商店 コンサルタント 中村タイスケ氏(モデレーター)|Design Morning Radio MC15:00 Session3「人口減少と地域の未来」 田中友美子氏|NTTコミュニケーションズ株式会社 KOEL Design Studio Head of Experience Design 佐々木康裕氏|Takram フューチャーズ・リサーチャー 井上裕太氏(モデレーター)|KESIKI Co-founder & Executive Director16:00 Session4「地域における金融の役割」 松本直人氏|株式会社ABAKAM 代表取締役 加藤有也氏|SIIF インパクト・オフィサー 井上裕太氏|KESIKI Co-founder & Executive Director17:00 Session5「地域の50年後を考える」 渋谷修太氏|フラー株式会社 代表取締役会長 坂田源彦氏|株式会社BSNアイネット 執行役員 佐藤あゆ氏|NPO法人越後妻有里山協働機構 坂井俊氏(モデレーター)|株式会社DERTA 代表取締役社長/株式会社クーネルワーク 共同創業者兼取締役CFO18:00 QAタイム19:00 交流会当日の様子「Design Dimension 2024 NIIGATA」では、総勢16名のゲストが登壇。各セッション45分間にわたり、多様な視点から地域デザインに関する議論が展開されました。以下では、当日の模様をダイジェストでお伝えします。オープニングは、HAKUHODO DESIGN代表であり、『「デザイン経営」宣言』(2018年5月23日、経済産業省・特許庁)の策定にも寄与した永井氏による基調講演「地域企業のデザイン経営化」。デザイン経営がイノベーションとブランディングにおいて重要な役割を果たす現代、地方の中小企業やスタートアップ企業がまず取り組むべきステップとは何か。企業規模に関係なくデザイン経営が有効であることを示し、一人ひとりが「意味を問い直しカタチを与える」ことの重要性を力強く示しました。続くセッションでは、「ものづくりの街 燕三条」で活躍する澤氏、齋藤氏、武田氏が登壇し、「産業の変化と成長の可能性」をテーマに議論が行われました。それぞれの立場から、燕三条の産業が直面する変化と、今後の発展を左右するポイントについて洞察を共有。世界の最先端を走る燕三条の技術力にも触れ、ここでしか聞けない貴重なトークが繰り広げられました。新潟を代表するデザイナー、石川氏と堅田氏によるセッションでは「デザインによる地域性の価値化」をテーマに議論が行われました。新潟をはじめとする各地域に根付くブランドについて、デザイナーとして価値を最大化するために重視すべき点や求められる視点が語られました。多くの地域プロジェクトに携わってきた両氏だからこそ見える、ブランドの本質を捉えた価値化の手法が提示されました。次のセッションでは、田中氏、佐々木氏、井上氏が「人口減少と地域の未来」をテーマに登壇。人口減少や経済縮小、物質が飽和した現代に対し、国内外での活動を通じて見えてきた持続可能な地域社会のあり方について議論が交わされました。その中では、日本の都市部で増加する「ノンプレイシーズ(記憶に残らない場所)」を地方で作り出さないための施策や、真の豊かさとは何かという深い問いが提起されました。地域デザインのフィールドワークや実体験に基づく洞察は、“幸せの軸”を再考する多くの示唆に満ちていました。セッション「地域における金融の役割」では、松本氏、加藤氏、井上氏が登壇し、金融の視点から持続可能な地域社会の未来について議論が展開されました。金融とデザインは無縁に思われがちですが、地域の未来を支える上で金融の流れをリデザインすることは非常に重要です。セッションでは、地方創生に向けた金融分野からのデザイン的アプローチについて模索が行われました。最後には、「これからの金融には、デザイナーの問いの力が必要」と強調され、参加者には探求の姿勢を持つことが呼びかけられました。ラストセッションでは、新潟に縁のある渋谷氏、坂田氏、佐藤氏、そしてDERTA坂井が「地域の50年後を考える」をテーマに登壇。今後50年を見据えた地域での働き方やライフスタイル、価値観の変化について議論が交わされました。人口減少といった課題がある一方で、一人当たりのリソースが増え、新たな可能性が生まれるという前向きな視点も共有され、セッションは未来への希望を感じさせるポジティブなメッセージで締めくくられました。今回の新潟開催では、「Design Dimension Conference」として初の試みがありました。まず、全ゲストが登壇した「QAタイム」。この時間は、登壇者同士だけでなく参加者も加わった活発なコミュニケーションが生まれ、カーテンコールのような盛り上がりを見せました。もう一つの試みは、会場「MOYORe:」の複合的な空間を活用したブース展開です。DERTAが新潟県から受託を受けている取り組みとのコラボレーションとして、登壇者をメンターにお招きしたアイデア壁打ちブースなど、参加者向けに企画を用意しました。普段はワークラウンジとして利用されているスペースでは、セッションの様子がリアルタイムで投影され、登壇を終えたゲストや参加者がゆるやかに集まり、自由に議論が展開される場に。これらのコミュニケーションを重視したアイデアは、「Design Dimension」の運営メンバーからも高評価をいただきました。「Design Dimension 2024 NIIGATA」は、「経営とデザイン」を軸に、地域を多角的に見つめ直すカンファレンスとなりました。事業や組織、金融といった多様なビジネス領域においてデザインが関与し、地域課題の解決にデザインの力が大きな可能性を持つことが強く示されました。DERTA Communityの定期イベント「DERTA Jam」では、これまで身近な人々に耳を傾け、広義のデザインについて共に考える場を提供してきました。一方、「Design Dimension Conference」では、県内外の第一線で活躍する専門家の視点から、さらに深い学びや新たな交流が生まれました。今後もDERTAは、地域でイノベーションの種を蒔く同志として、「Design Dimension」の活動を積極的に支援してまいります。Credit企画、ディレクション:坂井俊、須貝美智子当日運営:須貝美智子、齋藤華、山之内麻菜、平山茉咲